誕生
26歳の若さで世を去ったロックミュージシャン。尾崎豊が
1990年11月にリリースされた通算5枚目のアルバムです。
実は僕はこのアルバムが一番好きで、再起をかけて自分のすべてを
注ぎ込んでいた彼の意気込みが前面に伝わってくるからです。
収録楽曲もCDにして2枚組20曲はシングル化もされ
「共同条理の原理の嘘」
といった難解な歌詞で有名な「LOVE WAY」や
男女の危ういバランスに立っている愛を切々と歌い上げる
「黄昏ゆく街で」
この曲は彼の生み出した畢生のラブソングであると考えており、
「I LOVE YOU」
よりもずっとずっと心に響いてくるものがあります。
覚せい剤取締法違反で東京拘置所に収監された時の体験を
下敷きにして作られたという
「 COLD JAIL NIGHT」
文明批評の歌として現在でも決して古びていない
「COOKIE」
といった名曲がある中でも、このアルバムが持つ最大の2曲は
表裏一体の関係であり、自らの体験を普遍化させたという
「永遠の胸」
(この曲をアルバムのタイトルにしようかと最後まで迷ったとのこと)
と、『私小説』として発表したという
「誕生」
でしょう。この2曲は是非、ライヴでも聞いていただきたいです。
この文章を書いていてつくづく思うのは、自分の年齢が彼をとっくに
追い越してしまっているということで、やはり彼は普通の人の
何倍もの速さと密度でその生涯を駆け抜けていったのだなと。
そんなことを強く思わざるを得ないのです…。