ベスト落語 五代目 柳家小さん 「狸」「禁酒番屋」
五代目・柳家小さん師匠の演じる
「狸(たぬき)」「禁酒番屋(きんしゅばんや)」でございます。
柳家小さん師匠のことは落語を扱ったマンガ『どうらく息子』
で知ったかどうかはおぼろげなのですが、名前だけは存じ上げて
いたのです。しかし、ブックレットに掲載されている略歴を
読んでみると、昭和11年に所属した麻布第三連隊が世に言う
『2・26事件』の『反乱軍』に入れられて、警視庁を占拠し、
行かされると言うなかなかヘヴィな生涯が書かれてあって、
本当にびっくりしてしまいました。そこから除隊と入隊を
繰り返し、芸を磨いてきたのだなということが推察されます。
そこから「笑い」を追求する生き方は、なんとも
壮絶だったのだなと、昨日このCDを聞いていたときはただ
笑うだけでしたが、こうして文章にしているときに、
また別な感情が巻き起こってまいりました。
『狸』罠にかかって助けられた狸が恩返しをするために
紙幣に化けるという噺でしたが、ある種の『おとぎ話』
のなかにも人間の持つ『悲哀』がにじみ出ているように
感じました。
『禁酒番屋』ブックレットによると、元々は上方の
噺なのだそうで、もうひとつのタイトルは『禁酒関所』
(これは上方で言うらしい。)
しかし、ここでは上方色というものがいっそうされていて、
「そうだったのか!」
と驚きの念がございました。
じっくりと腰を落ち着けてこういう噺に耳を傾けるのは、
なんとも贅沢な時間でございます。