有坂汀の音楽レビュー

私、有坂汀が今まで聞いていた音楽や、最近お気に入りの音楽をアルバム中心に紹介するブログです。

MTVアンプラグド・イン・ニューヨーク

フロントマンであったカート・コバーンの死後である

1994年に発売されたニルヴァーナのライブ・アルバムです。

彼の死後に初めて発表されたアルバムで、これを聴く度に生々しい感情が

溢れてきます。録音された日時は1993年10月18日、

ニューヨークのソニースタジオで録音されたのだそうです。

タイトルこそ『アンプラグド』で

アコースティックな音がベースなのですが、

ドラムが入っていたり、

ギターにアンプが繋がれているということで、

厳密にはそういえないのですが、

彼らの真骨頂である爆音ロックを抑え、

あえて音を抑えているからこそ、

一つ一つの楽曲(あるいはカヴァー曲)の

よさが引き立っていると思うのです。

カートの伝記によると、出演前にヘロインを

キメていたそうで、その事実が頭をよぎると

なんともいえないものがあります。

カートがMCで

『これは、最初のアルバムから。まぁみんな知っているだろうけれど』

と半ば皮肉めいた調子から始まる『アバウト・ア・ガール 』

ギターソロのリフが哀愁を誘い、「僕は拳銃を持っていないんだ」

と何度も繰り返される『カム・アズ・ユー・アー 』は

何度聞いても切なくなります。

『ジーザス・ダズント・ウォント・ミー・フォー・ア・サンビーム』

に続いてディヴィッド・ボウイのカヴァー曲であり、

彼の心を病んだ兄のことを

歌ったとされる『世界を売った男』

その意味深な歌詞の内容はいつ聞いても

心を揺り動かされます。

「一人で演ったら?」

といわれギター一本の弾き語りで

演奏される魂の『ペニーロイヤル・ティー 』

何度も歌っている途中で失速しながら『魂』の叫び声で

『すわってペニーロイヤル・ティーを飲む 僕の中から生命を搾り出すんだ』

という歌詞は本当に『彼自身』なんだなと思ってしまいました。

さらに自嘲的な『ダム』アブナイ歌詞の内容を

美しい調べで歌う『ポーリー』

『オン・ア・プレイン』彼の放浪体験を元に綴った

『サムシング・イン・ザ・ウェイ 』に続いて、

友人のバンドである「ミート・パペッツ」を

ゲストに迎え、彼らの楽曲である『プラトー

『オー・ミー』『レイク・オブ・ファイア』をともに歌ったあとは

自らの楽曲である『オール・アポロジーズ』を歌い。そして、最後である

圧巻の演奏であるブルースシンガー・レッドベリーのカヴァーである

『ホエア・ディド・ユー・スリープ・ラスト・ナイト』これもまた

魂の演奏で最後の歌詞を歌う前の一息はくシーンは

『死ぬ前の最後の一息のようだった』

とある人間に言わしめるほどでございました。グランジ・シーンという

一つのムーヴメントを永遠に閉じ込めたようなアルバムで、

当時の状況を回想するのもよし。

カート・コバーンという一人の『芸術家』の

魂に触れるもよし。もしくは、単純に聞いて楽しむもよし。

何度聞いても魂の震える1枚です。

MTV アンプラグド・イン・ニューヨーク

MTV アンプラグド・イン・ニューヨーク